「親が認知症と診断されたけれど、もう遺言書は作れないのだろうか?」というご質問は多く寄せられます。
結論から申し上げますと、「認知症=絶対に遺言書が作れない」というわけではありません。
遺言書を作成した時点で、遺言の内容を正しく理解し判断できる能力(遺言能力)があったかどうかが重要になります。
1. 「遺言能力(いごんのうりょく)」とは?
遺言能力とは、「自分がこれから書く遺言の内容と、その結果どのような影響が出るのかを自分で正しく理解・判断できる能力」のことです。
単に名前や日付が書けるということだけでなく、以下のようなことが理解できているかが問われます。
- 誰に何の財産を譲るのか
- 自分の財産(不動産や預金)がどれくらいあるのか
- 家族や親族が誰なのか
2. 認知症でも遺言書が作れるケース・作れないケース
認知症の症状には波があり、度合いも人それぞれです。そのため、一律に不可とされるわけではありません。
作れる可能性があるケース(軽度の認知症など)
- 症状が軽度・初期段階の場合
- 遺言の内容がシンプルである場合(例:「長男に自宅の土地建物を相続させる」など)
- 医師の診察や長年のお医者様の診断で「自分の意思表示ができる」と確認されている場合
作るのが難しいケース(中度〜重度の認知症など)
- 自分の家族(子どもなど)の顔や名前が分からない
- 自分の持っている財産や自宅の場所が理解できていない
- 遺言書の内容が非常に複雑で、本人が理解できていない(誰かに無理やり書かされている)
3. なぜ後から「裁判トラブル」になりやすいのか?
認知症の疑いがある状態で遺言書を作ると、亡くなった後に親族間で「あの時、お父さんは認知症だったから遺言書は無効だ!」と裁判(遺言無効の訴え)で揉めてしまうケースが非常に多いです。
特に「手書きの遺言書(自筆証書遺言)」の場合、作成時の本人の状態を誰も公的に証明できないため、無効とされるリスクが高くなります。
4. 認知症の不安がある場合の「3つの安全対策」
後からのトラブルを防ぎ、本人の意思をしっかり形に残すためには、以下の準備が欠かせません。
① 「公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)」で作成する
公証役場で法律のプロである「公証人」が直接本人と面談し、意思疎通や判断能力の有無を確認した上で作成します。手書きよりも確実性が高くなります。
② 作成前後に「医師の診断書」を取得しておく
作成した日に、主治医や専門医に「長谷川式スケール(認知機能テスト)」などの検査を受けてもらい、「遺言を作成する判断能力がある」という診断書や見解書をもらっておきます。
③ 打ち合わせや作成時の「動画・録音」を残しておく
公証人や専門家とのやり取り(本人がしっかり自分の言葉で返答している様子)を動画や音声で残しておくことで、後から無効を主張された際の強力な証拠になります。
まとめ
認知症の症状が進んでしまうと、本人の意思で遺言書を作成することは一切できなくなってしまいます。
「少し物忘れが増えてきたかもしれない」「将来に備えてしっかり残しておきたい」と感じたら、できるだけ早い段階(判断能力が十分にあるうち)に準備を始めることが最も安心で確実な方法です。
- 「親の現在の状態で遺言書が作れるか相談したい」
- 「医師の診断書や公証役場との調整を含めて専門家に任せたい」
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