「実家を継ぎたいけれど、他のきょうだいに支払うお金(代償金)をどう準備すればいいか分からない」
「後から『代償金の額が不当だ』と揉めないために、事前に準備しておくべきことは?」
相続財産の大部分が不動産(実家や土地など)や自社株式などで預貯金が少ない場合、特定の相続人が不動産などを引き継ぐ代わりに、他の相続人へ自己の財産から金銭(代償金)を支払ってバランスをとる方法が「代償分割(だいしょうぶんかつ)」です。
代償分割を円滑に進めるためには、事前準備と事前の資金計画が極めて重要になります。
今回は、行政書士の視点から、代償分割を成功させるための具体的な準備手順、評価額の決め方、資金の調達方法、そして協議書作成時の注意点について分かりやすく解説します。
1. 代償分割の事前準備:5つのステップ
代償分割を行うにあたっては、以下の順序で準備を進めていくのが最もスムーズです。
【ステップ1】全相続人の把握(戸籍収集)
↓
【ステップ2】遺産の調査・評価額の確定(不動産鑑定・査定など)
↓
【ステップ3】代償金(支払額)の計算・試算
↓
【ステップ4】代償金の調達方法(支払手段)の確保
↓
【ステップ5】遺産分割協議書の作成・実行
2. 準備の最重要ポイント:不動産の「評価額」の決め方
代償分割で最も揉めやすいのが、「代償金の計算基準となる不動産の価値(評価額)をいくらにするか」という点です。
代償分割における不動産の評価額は、「時価(実勢価格)」を基準に設定するのが原則とされていますが、算出方法にはいくつか種類があります。
主な評価方法の種類
| 評価方法 | 概要と特徴 | 適用場面・注意点 |
| 公示価格・路線価 | 国や税務署が定める公的な価格。相続税の計算に使われる。 | 時価より安く算出されがち(時価の7〜8割程度)。 |
| 実勢価格(査定価格) | 不動産会社による売却想定価格。 | 代償分割で最も一般的。 複数社に査定を依頼して平均をとるのが安全。 |
| 不動産鑑定評価 | 不動産鑑定士による厳密な証明価格。 | 公的・法的な説得力が最も高いが、数十万円の鑑定費用がかかる。 |
【トラブルを防ぐコツ】
不動産会社2〜3社に無料査定(机上査定・訪問査定)を依頼し、その査定書を根拠として相続人全員に提示するのが一般的です。全員が同意すれば、税務上の「路線価」を基準に合意することも法的に問題ありません。
3. 「代償金」が払えない場合の資金調達・準備方法
「計算してみたら代償金が1,000万円になったけれど、手元の預金では足りない」というケースは多く発生します。その場合は、事前に以下のような資金準備・代替案を検討しておきます。
- 準備①:金融機関の「不動産担保ローン」「相続ローン」を利用する 引き継ぐ実家などを担保に入れて融資を受け、代償金に充てます。自身の収入や年齢・返済計画に問題がないか事前に金融機関へ事前相談をしておきます。
- 準備②:「分割払い」の合意を取り付ける 一括払いが難しい場合、「毎年〇〇万円ずつ〇年間の分割払い」という条件で他の相続人と交渉します。
- 準備③:親が存命中の場合「生命保険」を活用してもらう(生前対策) まだ親が存命であれば、親を被保険者・自分を保険金受取人とする生命保険に入ってもらうことで、亡くなった際に入ってくる保険金をそのまま代償金として活用できます。
4. 遺産分割協議書を作成する際の「3つの注意点」
代償分割の条件がまとまったら、必ず「遺産分割協議書」へ正しく明記しなければなりません。ここでのミスは重大な税金トラブルにつながります。
注意点①:協議書に「代償分割である旨」を明確に記載する
協議書の中に「〇〇は実家を取得する代わりに、〇〇に対して代償金〇〇万円を支払う」という文言を明確に記載します。
この記載がないと、税務署から「代償金ではなく、単なる個人の贈与」と判断され、受け取った側に高額な贈与税が課されてしまうおそれがあります。
注意点②:支払い期限・方法・振込口座を指定する
トラブルを避けるため、「いつまでに(例:令和〇年〇月〇日までに)」「どの口座に(振込先情報)」支払うのかを具体的に特定して協議書に記載します。
注意点③:分割払いの場合は「遅延損害金・担保」などを協議しておく
代償金を分割払いにする場合は、途中で支払いが滞った際のリスクに備え、協議書の中で期日や滞納時の扱いについて明記しておくことが重要です。
まとめ:失敗のない代償分割の準備は専門家へお任せください
代償分割は、不動産の評価額の算出や代償金の試算、税務上の配慮など、専門的な知識と周到な事前準備が求められる手続きです。
当事者同士だけで「いくら払うか」を直接話し合おうとすると、どうしても感情的になりやすく交渉が行き詰まってしまうケースが少なくありません。
- 「実家の適正な評価額の調べ方や、代償金の試算をしてほしい」
- 「代償金支払いの文面を盛り込んだ、不備のない遺産分割協議書を作成してほしい」
- 「相続人全員が納得できるよう、第三者の専門家として間に入って調整してほしい」
とお悩みの方は、ぜひ行政書士きいサポートオフィスにご相談ください。
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