「長男に家業を継がせるため財産を集中的に残したい」「同居して長年介護をしてくれた子供に多く財産を譲りたい」といったご希望を持つ親御様は少なくありません。
しかし、特定の子供だけに多く財産を残そうとすると、他の子供から法律上の権利である「遺留分(いりゅうぶん)」を主張され、遺産分割後に兄弟間で大きなトラブルへ発展するリスクがあります。
トラブルを最小限に抑えつつ、希望通りに財産を渡すための具体的な対策とポイントを解説します。
1. 遺留分(いりゅうぶん)とは?
遺留分とは、一定の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に法律上最低限保障されている遺産の取り分です。
遺言書で「すべての財産を長男に譲る」と残しても、他の子供は長男に対して最低限の権利(法定相続分の1/2)に相当する金銭を請求することができます。これを「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」と呼びます。
2. 遺留分トラブルを防ぐ主な生前対策
① 遺言書に「付言事項(ふげんじこう)」を記載する
- 内容:遺言書の最後に、なぜその分配割合にしたのかという理由や、子供たちへの感謝・想いを文章として残します。
- 効果:法的強制力はありませんが、親の真意や感謝の気持ちを伝えることで、他の子供が納得し、遺留分請求を思いとどまる感情的な効果が非常に高い対策です。
② 生命保険を活用する(死亡保険金の受取人指定)
- 内容:多く財産を残したい子供を受取人にして生命保険に加入します。
- 効果:受取人に指定された死亡保険金は原則として「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」となるため、遺留分算定の対象から外れやすくなります。また、万が一遺留分を請求された際の支払原資(現金)としても活用できます。
③ 生前贈与 + 特別受益の持ち戻し免除
- 内容:元気なうちに特定の子供へ不動産や資金を生前贈与しておきます。
- 注意点:相続開始前1年間(相続人への贈与は原則10年間)の贈与は遺留分の計算対象に含まれます。遺言書で「持ち戻し免除」の意思表示をしておくことで、遺産分割時の調整対象から外すなどの対策を組み合わせます。
④ 推定相続人の遺留分放棄(家庭裁判所の許可)
- 内容:生前に他の子供と話し合い、同意を得た上で家庭裁判所に申し立てを行い、あらかじめ遺留分を放棄してもらう手続きです。
- 条件:本人の自由意思であることや、放棄の見返りとして相応の生前贈与(見舞金や準備金)がなされていることなど、厳格な条件が必要です。
3. やってはいけない注意点:自筆の適当な遺言書は危険
自筆で「〇〇に全財産を譲る」とだけ書いた遺言書を残すと、残された子供同士の感情的な対立を煽り、泥沼の裁判トラブルに発展しかねません。
特定の子供に多く残す場合は、遺留分侵害額の計算を踏まえた設計と、公正証書遺言での作成が極めて重要です。
まとめ:想いを確実に形にするために
遺留分対策は、法律的な知識と慎重な設計が不可欠です。円満な相続を実現するためには、早期からの準備をお勧めいたします。
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